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超越すること──体の治癒力を目覚めさせる

見たり、聞いたり、行動するといった、それら日常の経験のすべては、神経系の活動によって生じます。もし、経験が強すぎると神経系の構造に負荷がかかり、それが緊張やストレスとなって蓄積されます。

例えば、誰かと言い争ったりすると心臓が締め付けられたりしますが、これは神経系に大きな負荷がかかり、それがストレスとなって体の正常な機能を妨げてしまうのです。

疲労は、睡眠中の休息だけでは十分にとることができない

一日を通して、さまざまな経験によって神経系に負荷がかかり、ストレスが蓄積されていきます。そのことを、黒板に例えて説明しましょう。

朝起きたときには、黒板には何も書かれていません。しかし、一日を通して何かを体験するたびに、少しずつ黒板に何かが書かれていきます。そして、ある時点で黒板はいっぱいになり、それ以上、書くことができなくなります。そのときは黒板を消して、またきれいにしなくてはなりません。

それと同じように、神経系がストレスでいっぱいになると、神経系の能力は低下し、もうそれ以上、機能できなくなってしまいますから、すべてのストレスを消して、きれいにしなくてはなりません。

幸運なことに、体にはそのための自然なプロセスが備わっています。そのプロセスは、睡眠中に体が休息しているときに起こります。休息をとって体がリラックスすれば、神経系の緊張が緩んで疲労が解消されます。

しかし、問題は、忙しい毎日を送っていると、受け取る経験が多過ぎて睡眠中の休息だけでは、すべての疲労やストレスを取り除くことができない、ということです。そのため朝起きても体のだるさが続き、疲労が慢性化していきます。

多くの病気は、蓄積された緊張やストレスが原因

睡眠によって解消されない緊張やストレス──それは時間とともに蓄積していきます。その結果、次第に体の自然な働きが阻害されて、様々な精神的および身体的な問題が生じてきます。

これらの問題は、最終的には、遺伝的に私たち体の最も弱いところに現れてきます。ある人は心臓病に、また別の人はうつ病になるかもしれません。しかし、遺伝的要因が病気の原因なのではありません。真の原因は、体の自然な働きを阻害する、緊張やストレスを完全に取り除くことができない、ということにあります。

このように、体の自然な働きが損なわれることが、心身の病気の90%の直接的または間接的な原因であると見なされています。

瞑想中、心の活動は減少していき、やがて完全に静かで落ち着いた状態へと至ります。それが超越の体験です。
(詳しくは、「超越すること—自分自身になる」をご覧ください)

心と体は密接に関わっているため、心が完全に落ち着くと、体もリラックスして深い休息を体験します。それは睡眠中に得られる休息よりも、もっと深い休息です。これは実際に客観的に測定することができます。

超越瞑想の実践中睡眠よりも深い休息が得られる

このグラフはハーバード大学、医学大学院で行われた研究調査の結果を示しています。

Science 27 Vol. 167 no. 3926 pp. 1751-1754 1970
Scientific American 226:84-90 1972

この研究では、瞑想中と睡眠中の酸素消費量を比較して休息の深さを測定しました。その結果、TM(超越瞑想)を行っている間、体は、睡眠中に得られる休息よりも深い休息の状態に素早く入っていくことが分かります。

この注目すべき調査は、1971年にサイエンス とサイエンティフィック・アメリカン という二つの権威ある科学雑誌に掲載されました。その後も、TM中の休息の深さは、30件以上にわたる研究によって繰り返し確認されています。

TMに関する31の調査を分析した研究では、呼吸率、心拍数、血漿中の乳酸塩濃度の測定においても、TMによるリラクセーションは、通常の閉眼時の休息よりもはるかに深いことが実証されています。
[American Psychologist 42: 879–881, 1987]

その結果として、体は活力を取り戻し、自分自身を癒し始めます。長時間の睡眠や長期にわたる治療によっても取り除くことのできなかったトラウマ性のストレスさえも取り除いていきます。

原因を取り除くことができれば、その結果も消えていきます。体の自然な機能を阻害している根深いストレスを取り除けば、体が適切に機能しないことから生じるすべての問題は自動的になくなります。このサイトでご覧いただけるように、その効果は人生のすべての領域に現れてきます。

最も劇的に見られるのは、深刻な問題を抱えた人たちや、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しむ退役軍人や難民の人たちです。こうしたトラウマ性ストレスの治療では、薬で症状を抑えることしかできず、根本的な解決策は見つかっていません。

ところが、これまでに行われたいくつかの研究によって、超越瞑想を4〜12週間行うだけでPTSDの症状が大幅に軽減したり、完治することが分かりました。[Journal of Counseling and Development 64: 212–215, 1985][Military Medicine 176 (6): 626-630, 2011][Journal of Traumatic Stress. 2013:1-14]
(詳しい情報は、「 PTSD」をご覧ください)

これらの研究は、私たちの体には自分自身を癒す非常に強い力が備わっていることを示しています。私たちに必要なのは、その力を目覚めさせることだけです。

超越瞑想によって、こうした深刻なトラウマが癒されるのであれば、ストレスを抱えた一般の人々に効果があることは容易に理解できるでしょう。

ストレスが軽減すると、ストレスへの抵抗力が増す

ストレスは悪循環:ストレスが多いともっとストレスが多くなる

ストレスは悪循環を作ります。ストレスが多いほど、さらにストレスを受けやすくなります。ストレスにさらされるとバランスを失ったり、議論や喧嘩に巻き込まれたりして、さらに多くのストレスを受けることになるのです。

また、ストレスは創造性を妨げるため、問題の解決策を見つけることも難しくなります。解決できない問題に直面すると、それがまた新たなストレスの原因となってしまうのです。

1日2回、各20分の瞑想でこの悪循環を断ち切ることができる

超越の体験がもたらす深い休息は、この悪循環を断ち切ります。体に深い休息を与えることで、神経系はストレスから解放され、体は再び正常に機能し始めます。

その結果、バランスを失うことなく、自分自身を維持できるようになるのです。もし私たちがいつも休息のとれた状態であれば、ものごとに柔軟に対処することができ、新たなストレスも生じなくなります。
それは、ちょうど水の上に書いた線のようです。深い休息によって、ストレスはすぐに消えてなくなるのです。

American Psychologist 42: 879–881, 1987

このことは客観的にも測定できます。TMを規則的に3カ月間実践した人の心拍数、酸素消費量、電気皮膚抵抗、血漿中の乳酸塩を測定した結果、TM実践者は瞑想していないときにも、落ち着いていて、安らいでいることが分かりました(この調査はTMに関する31件の調査の平均値を示しています)

また、TM実践者はストレスに満ちた刺激にさらされても、バランスのとれた状態により早く戻ることができます。ストレスに対する抵抗力は、客観的にも測定できます。この研究は、超越の体験がストレスに対する抵抗力を高めることを示しています。

ストレスの軽減は、実は、TM中に起こっていることの副次的な効果にすぎません。体に備わっている治癒力が目覚めれば、体の機能を妨げていた不純物はすべて、雪が日に当たって溶けていくように消えていきます。
(詳しくは、「超越すること──人間の最高の体験」をご覧ください)

ストレスの軽減に関するTMの科学的研究については、「ストレスの解消」を参照してください。